●18歳成人・選挙権検討再開
政府「18歳成人」検討、自民に配慮 関連法200本
(日本経済新聞2012年1月26日)
政府が2月から選挙年齢や成人年齢の引き下げに関する検討を再開する。憲法改正の可否を決める国民投票の投票権年齢を18歳以上とした国民投票法が2007年5月に成立してから、長くたなざらしになっていた問題だ。公職選挙法や民法など関連法は約200本。各論になると賛否が交錯する問題でもあり、簡単に結論はでそうにない。
各府省の事務次官らが参加する「年齢条項の見直しに関する検討委員会」(委員長・竹歳誠官房副長官)で検討する。
国民投票法は付則で、法施行までに成人年齢や選挙年齢について検討し法的措置を講じると定めている。ところが、同法の採決強行に反発した民主党が、同法が定める憲法審査会の始動に抵抗するなどしたため、成人年齢に関する検討作業も停滞。10年5月の法施行直前で中断した。
検討を再開するのは、逆転国会のなかで与野党対話を模索する野田政権が、憲法改正を党是とする自民党に配慮したとの見方が大勢だ。ただ、検討課題は膨大で作業には時間がかかりそうだ。
例えば公職選挙法で「20歳以上」としている選挙年齢を国民投票法にあわせて「18歳以上」とした場合、最高裁裁判官の国民審査や裁判員を選ぶ規定も連動して見直すかどうかが問題になる。
民法の成人年齢を引き下げた場合も影響が大きい。医師法のように「未成年者には免許を与えない」としている法律は別途、法改正をしない限り、自動的に規制年齢が変わる。飲酒や喫煙などのように法律に「20歳未満はできない」とある場合は法改正するかどうかの判断が必要になる。
欧米では「18歳成人」が主流。実現すれば若年層の自立や政治への関心を促す効果が期待できる。一方で、社会経験が乏しい若者の消費者被害が拡大する可能性もある。少年を「20歳未満」と定める少年法を改正すれば、18~19歳の犯罪の厳罰化や更生の機会が奪われるといった問題がでてくると指摘する声もある。
今国会での関連法案提出は困難、というのが政府の立場。長浜博行官房副長官は26日の記者会見で選挙年齢だけを先行して引き下げる考えに言及した。ただ、成人年齢の引き下げを提言した09年の法制審議会は「選挙年齢と一致していることが望ましい」としており、段階的な見直しにもハードルがある。
「20歳成人」に関係する主な法律
国民投票法 18歳以上の国民は憲法改正の投票権を有する
公職選挙法 20歳以上の国民は衆参両院議員の選挙権を有する
民 法 20歳をもって成年とする。未成年者の契約や結婚など法律行為は制限される
医師法 未成年者には医師免許を与えない
未成年者飲酒禁止法 20歳未満は飲酒できない
未成年者喫煙禁止法 20歳未満は喫煙できない
児童福祉法 母子生活支援施設では20歳になるまで保護できる
18歳選挙権 まず憲法論議を進めよう
(産経新聞2012年1月29日)
「20歳以上」となっている現在の選挙権年齢を「18歳以上」へ引き下げる検討作業を野田佳彦政権が2月に始める。
民主党憲法調査会がこの問題を優先すると決めたのを受けたものだが、昨年11月にようやく始動した衆参両院の憲法審査会での憲法改正論議を先送りする事態にもつながりかねない。
東日本大震災は、非常時に国民の生命・安全を守るべき国家の機能が十分働かない実態を見せつけた。憲法などの基本的枠組みが不十分であることが、改めて浮き彫りになった。現行憲法の見直しこそ喫緊の課題である。
投票権を18歳以上と定めた憲法改正手続きのための国民投票法は平成19年に成立した。
公職選挙法や民法など「20歳成人」を前提とする他の法律との整合性を取る必要があり、必要な措置は22年5月の国民投票法施行までに完了させると規定していた。しかし、民主党は政権交代後も検討作業を事実上放置してきた。
関連法改正などの措置を取ることは、国民投票法の付則に定められている。ただ、同じ付則には「法制上の措置が講ぜられるまでの間」は「20歳成人」が適用されることも明記されている。
また、実際に選挙権年齢を引き下げる場合、18歳、19歳の選挙人名簿を新たに作る必要があり、その数は約240万人とされる。
膨大な事務作業を要するのに加え、関連法改正などの問題点を考えれば、時間だけを費やすことになりかねず、憲法改正論議を棚上げすることに狙いがあると言わざるを得ない。
自民党は7年前に「自衛軍の保持」などを盛り込んだ新憲法草案を発表している。今年はサンフランシスコ講和条約発効60周年にあたり、4月28日までに緊急事態条項などを盛り込んだ新たな憲法改正案をまとめる方針だ。
これに対し、民主党は党憲法調査会で議論する憲法改正の具体的なテーマすら決まっていない。昨年5月、調査会長だった前原誠司政調会長は改正案を今年3月までにまとめる目標を立てたものの、氏が去ると白紙になった。
政府は各府省横断の検討委員会も設けて、成人年齢の議論を引き取る考えだ。大震災対応で失政を重ねた民主党が優先すべきは、緊急事態条項などをどうするかという憲法改正の作業である。